介護・福祉
2024.03.26
生活保護受給者の介護扶助受給状況調査
生活保護制度の概要
生活保護とは
生活保護は、日本国憲法25条で定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するために、困窮の程度に応じて生活費や教育費・医療費などの補助を行う制度です。
年齢や世帯人員数、世帯構成などによって定められた「最低生活費」が年金・児童扶養手当等の収入を下回った場合支給対象になりますが、他にも細かな規定があるため、申請にはまず福祉事務所への相談が必要です。
厚生労働省:生活保護制度
保護の種類と内容
表1 保護の種類と内容
厚生労働省 生活保護制度より
介護扶助受給者分析
介護扶助受給者の推移
グラフ1 生活保護・介護扶助受給者数推移
厚生労働省 被保護者調査・介護保険事業状況報告より当社作成
上記のグラフ1は、生活保護・介護扶助受給者と介護扶助受給率を介護度別に年次推移で表したものです。青の棒グラフが介護度別の介護扶助受給者数、赤の折れ線が65歳以上の生活保護受給者数、青の折れ線がそのうち介護扶助受給率を示しています。
このグラフが示している通り、近年65歳以上の生活保護受給者数は伸びが緩やかになっているのに対し、介護扶助受給者数と受給率は右肩上がりで推移していることがわかります。
また、次に示すグラフ2は65歳以上の生活保護受給者における介護扶助受給率(青線)と、65歳以上人口全体の介護サービス実受給率(赤線)を比較したものです。65歳以上人口全体の介護サービス実受給率(赤線)が15%~20%で推移しているのに対し、65歳以上の生活保護受給者における介護扶助受給率(青線)は2020年に35%に達しており、生活保護受給者は介護サービスを受ける割合が非常に高いといえます。
グラフ2 全国の生活保護実受給者割合と生活保護受給者のうち介護扶助受給率
厚生労働省 被保護者調査・介護保険事業状況報告より当社作成
介護扶助受給者の介護度
グラフ3 全国の要介護認定者と介護扶助受給者の介護度比較
厚生労働省 被保護者調査・介護保険事業状況報告より当社作成
次に、介護度を「要支援・要支援1~2・経過措置」「要介護1~2」「要介護3~5」の3区分に分け、2019年~2021年の全国の介護度別要介護認定者と介護扶助受給者の区分ごと割合を比較しました。
要介護認定を受けても介護サービスを受給しない認定者が一定数存在するため単純比較は難しいですが、全体的に介護扶助受給者の介護度のほうが高い傾向がみられます。
まとめ
グラフ4 65歳以上人口における被保険者率と要介護認知者における扶助受給率
厚生労働省 被保護者調査・介護保険事業状況報告より当社作成
最後に、高齢者全体における生活保護被保護率(青線)と、65歳以上の要介護認定者数における介護扶助受給率(赤線)をグラフ4に表しました。生活保護を受給している高齢者は全体の約3%であるのに対し、介護扶助を受けている要介護認定者数は全認定者の5%を超えています。生活保護を受給している高齢者ほど介護を必要としている方が多いと考えられます。
令和3年被保護者調査によると、生活保護受給者のおよそ50%以上は高齢者です。今後日本は高齢化が進み、ますます生活保護・介護扶助を受給する高齢者が増えていくことが予想されます。
私たちCBリサーチは、医療・介護・福祉業界に特化した「戦略コンサルタント」として「地域包括ケアシステム」に沿った戦略構築と実行支援を行い、お客様の未来を共創する会社です。様々な新規事業展開をワンストップで共創します。