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介護・福祉

2024.02.28

2024年度の介護保険制度改正、おさえるべきポイントを徹底解説③

  • 介護報酬改定
  • 地域包括ケアシステム
2024年度の介護保険制度改正、おさえるべきポイントを徹底解説③

前回、前々回に引き続き、2024年度介護報酬改定の続報をお伝えします。
介護保険制度改正の流れが分かりますので、前述のコラムもあわせてご一読ください。

関連コラム

「トリプル改定とは?」のおさらい

診療報酬は2年ごと、介護報酬・障がい福祉サービス等報酬は3年ごとに改定がされ、今年はその全てが同時に行われる「トリプル改定」の年です。
特に2025年問題・2040年問題へ向けて医療・介護・障害福祉の制度の連携強化が図られた重要な改定となります。

※「2025年問題」は、団塊の世代が75歳以上に達し、医療と介護の需要が急増する問題です。
※「2040年問題」は、団塊ジュニア世代が65歳以上になり、生産人口の激減により、医療・介護の財政と人材確保が厳しくなる問題です。

制度改正、現在の状況

今(令和6年2月26日現在)は制度改正の流れの中のどういう状況なのでしょうか。

①2022年3月に社会保障審議会の【介護保険部会】で審議がスタート
→12月に部会の取りまとめ「介護保険制度の見直しに関する意見」が報告される

②2023年5月より社会保障審議会の【介護給付費分科会】で審議がスタート
→12月に部会の取りまとめ「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告」がなされる

③2023年12月~2024年1月に介護報酬改定率、サービスごとの運営基準、算定構造が公表される

現在は②③により、制度改正の全体像が明らかになった状況です。
今後、告示・通知により正式に発表され、4月より新制度が始動することになります。

介護報酬改定の改定率

  • 全体で+1.59%の改定率(国費432億円)
  • そのうち処遇改善分+0.98%、それを除くと0.61%です。
  • そのほか光熱水費の増額分を加えると+0.45%相当の改定が上乗せされます。

第239回社会保障審議会介護給付費分科会資料

現時点で厚労省より公表されている制度改正についての最新基本資料は、
「第239回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料」です。

①主な事項をしっかり確認したい
【令和6年度介護報酬改定の主な事項について】

②改定内容の詳細を確認したい
【令和6年度介護報酬改定における改定事項について】

③審議報告をしっかり読みたい
【令和6年度介護報酬改定に関する審議報告】

④算定構造を確認したい
【介護報酬の算定構造(令和6年4月改定)】
【介護報酬の算定構造(令和6年6月改定)】

改定における4つの視点

今回の介護報酬改定の実施については、現状の人口構造や社会経済状況の変化を踏まえ、
以下4つの視点を持って行われます。

  1. 地域包括ケアシステムの深化・推進
  2. 自立支援・重度化防止に向けた対応
  3. 良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
  4. 制度の安定性・持続可能性の確保
  5. 各視点における細かな内容をみてみましょう。
    気になった項目は上記の厚労省資料にて目を通してみることをお勧めします。

    【1】地域包括ケアシステムの深化・推進

    ①質の高い公正中立なケアマネジメント
    ・特定事業所加算の見直し【居宅介護支援】

    ②地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取組
    ・特定事業所加算の見直し【訪問介護】
    ・総合マネジメント体制強化加算の見直し【定期巡回・小多機・看多機】

    ③医療と介護の連携の推進【高齢者施設等における医療ニーズへの対応強化】
    ・専門管理加算の新設【訪問看護・看多機】
    ・総合医学管理加算の見直し【老健の短期入所】
    ・重度者ケア体制加算の新設【療養通所介護】
    ・医療機関のリハビリテーション計画書の受け取りの義務化【訪問リハ・通所リハ】
    ・入居継続支援加算の見直し【特定施設・地域密着型特定施設】
    ・配置医師緊急時対応加算の見直し【特養・地域密着型特養】

    ④医療と介護の連携の推進【高齢者施設等と医療機関の連携強化】
    ・緊急時等の対応方法の定期的な見直し【特養、地域密着型特養】
    ・協力医療機関との連携体制の構築【特養、地域密着型特養、老健、介護医療院】

    ⑤看取りへの対応強化
    ・看取り連携体制加算の新設【訪問入浴、短期入所生活介護】
    ・ターミナルケア加算の見直し【訪問看護、老健】

    ⑥感染症や災害への対応力向上
    ・高齢者施設等感染対策向上加算の新設【特養等・特定施設等】
    ・業務継続計画未策定減算の新設【全サービス】

    ⑦高齢者虐待防止の推進
    ・高齢者虐待防止措置未実施減算【全サービス】

    ⑧認知症の対応力向上
    ・認知症加算の見直し【小多機・看多機】
    ・認知症チームケア推進加算の新設【グループホーム、特養等】

    【2】自立支援・重度化防止に向けた対応

    ①リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組等
    ・リハビリテーションマネジメント加算の新設【通所リハ、特養等】
    ・通所リハビリテーションの事業所規模別基本報酬の見直し【通所リハ】
    ・管理栄養士及び歯科衛生士等の通所サービス利用者に対する介入の充実【居宅療養管理指導】
    ・口腔連携強化加算の新設【訪問介護、訪問看護、訪問リハ、短期入所生活介護等】
    ・退所時栄養情報連携加算の新設【特養等、老健、介護医療院】

    ②自立支援・重度化防止に係る取組の推進
    ・入浴介助加算の見直し【通所介護等、通所リハ】
    ・在宅復帰・在宅療養支援機能の促進【老健】
    ・かかりつけ医連携薬剤調整加算の見直し【老健】

    ③LIFEを活用した質の高い介護
    ・科学的介護推進体制加算の見直し【通所介護等、特定施設等、小多機等、特養等】
    ・自立支援促進加算の見直し【特養等】
    ・ADL維持等加算【通所介護等、特定施設等、特養等】
    ・排せつ支援加算【看多機、特養等、老健、介護医療院】
    ・褥瘡マネジメント加算等の見直し【看多機、特養等、老健、介護医療院】

    【3】良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり

    ①介護職員の処遇改善
    ・「介護職員等処遇改善加算の一本化【訪問介護等の対象サービス】

    ②生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり
    ・利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の設置の義務付け【短期入所系、居住系、多機能系、施設系】
    ・生産性向上推進体制加算の新設【短期入所系、居住系、多機能系、施設系】
    ・人員配置基準の特例的な柔軟化【特定施設等】

    ③効率的なサービス提供の推進
    ・居宅介護支援費の見直し【居宅介護支援】

    【4】制度の安定性・持続可能性の確保

    ①評価の適正化・重点化
    ・同一建物減算の見直し【訪問介護】
    ・長期利用の適正化【短期入所生活介護】
    ・同一建物に居住する利用者へのケアマネジメントの見直し【居宅介護支援】
    ・多床室の室料負担(令和7年8月施行)【短期入所療養介護、老健、介護医療院】

    ②報酬の整理・簡素化
    ・基本報酬の見直し【定期巡回・随時対応型訪問介護看護】
    ・運動器機能向上加算の見直し【介護予防通所リハビリテーション】
    ・認知症情報提供加算の廃止【老健】
    ・長期療養生活移行加算の廃止【老健】

    【5】その他

    ・「書面掲示」規制の見直し【全サービス】
    ・通所系サービスにおける送迎に係る取扱いの明確化【通所介護等】
    ・基準費用額【居住費】の見直し(令和6年8月施行)【短期入所系、施設系】
    ・地域区分の特例

    おわりに

    2024年度の介護報酬改定の全容が明らかとなり、今回は加算の新設・見直しだけではなく、業務継続計画未策定減算や高齢者虐待防止措置未実施減算などの減算の新設も行われていますので、新年度までに準備が必要です。
    また、今後もまだ審議会や厚労省から制度改正に関する最新情報の公表の可能性がありますので、引き続き改正情報にアンテナを張って頂ければと思います。

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戸塚 岳泉

このコラムを書いたコンサルタント

戸塚 岳泉

ケアマネジャー•社会福祉士として、介護・障がい者・児童の幅広い福祉現場の経験を積み、NPO法人の事務局長、児童福祉施設の施設長、介護サービス会社の本部長として法人経営にも携わる。現在は株式会社CBリサーチの業務改善コンサルティングを担当。

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