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介護・福祉

2023.06.30

介護事業経営はサービスを提供する現役世代の人口減少にどう向き合うべきか

  • 地域包括ケアシステム
介護事業経営はサービスを提供する現役世代の人口減少にどう向き合うべきか

2023年現在、日本では少子高齢化が進行しており、2070年には高齢化率は39%の水準になると推計されています(将来推計人口(令和5年推計)の概要;厚生労働省)。介護サービスを必要とする高齢者人口が増える一方で、提供する現役世代の人口減少が予測されているなか、介護事業経営をどのように考えるべきなのでしょうか。

高福祉・高負担国家であるデンマークの考えとは

はじめに、日本と同じように高齢化が進んでいる国家を参考に考えてみましょう。例えば、デンマークは少子高齢化が進んでいる国の一つです。やはりデンマークにおいても日本と同様に、社会保障財源や介護士の不足が懸念されています。しかしデンマークでは、1979年から1982年にかけて高齢者に対する社会福祉の理念である「高齢者福祉の三原則」が定められ、その後数々の法制定がこの原則に則って行われています(デンマークの高齢者福祉政策を支えるもの;国立社会保障・人口問題研究所)。
「高齢者福祉の三原則」とは、以下の通りです。
1.生活の継続性(できる限り在宅でこれまでと変わらない暮らしができるように配慮する)
2.自己決定の原則(高齢者自身が生き方を自分の意思と判断で決定し、周囲はその選択を尊重する)
3.残存能力の活用(自身でできることの幸福感を享受し、残された能力を発展させて活かす)
この原則に基づき、デンマークでは1988年以降の「プライエム(日本の特別養護老人ホームに相当)」新規開設を禁止し、プライエムに代わり高齢者住宅の整備が始まりました(デンマークにおける高齢者住宅政策について;厚生労働省)。
そして、プライエムは廃止に向けて動き始めました。

「高齢者福祉の三原則」に基づく自立した生活

デンマークにおけるプライエムとは、自宅での生活ができなくなった重度の要介護高齢者のための入居施設であり、24時間の介護を提供する施設でした。しかしながら、「高齢者福祉の三原則」に則り、在宅対応は個人ニーズが介護を決めるべき、介護は高齢者個人に応じてあるべきであり、高齢者の住居に応じたものであるべきではない、という考え方が確立されました。そこから、デンマークの高齢者はなるべく自分の力で生活しようと、自分でできることは高齢者自身で行い、可能な限りの自立した生活をしています。そして、デンマークでは介護ロボットの導入も進んでおり、ヘルパーの負担軽減のために「ロボットに任せられることはロボットに任せて、ヘルパーの作業をなるべく少なくする」という考え方が一般的になっています。

介護ロボットの普及は介護サービス提供者の減少に追いつくか

では、日本において介護ロボットの導入は、介護サービス提供者の減少という課題解決に結びつくのでしょうか。
結論からいうと、長期的には解決できる可能性はありますが、短期的には難しいといえます。日本国内における介護ロボットの普及状況は、2021年度「事業所における介護労働実態調査結果報告書」(公益財団法人介護労働安定センター)によると、介護ロボットを導入していない割合が80.9%(無回答11.7%を含まず)となっており、介護業界全体では普及が進んでいない状況となっています。一方で入居系施設のみに着目すると、「見守り・コミュニケーション」型介護ロボットの普及割合が13.9%になるなど、入居系施設での導入割合は他の介護事業に比べて高い傾向にあります。介護業界全体において介護ロボットの導入が進まない理由として、「コスト面、現場ニーズとの乖離、機能面、対人ホスピタリティ、運用技術習得の困難さ」などが挙げられています(日本における介護ロボットの普及課題;国立研究開発法人 科学技術振興機構)。もちろん、日本国内においても「北九州モデル」のような実証事例はあり、厚生労働省は介護ロボットの開発・普及の促進を今後も図っていくでしょう。介護サービス提供者の減少が危機的状況となる前に、介護ロボットの普及は果たして進んでいくのか、介護現場・介護ロボット開発者・介護事業経営者のコンセンサスが問われています。

高齢者福祉の三原則と介護事業経営の両立を図る

さて、私が前回執筆したコラム『介護業界に求められる効率化を実現させるカギ』では、介護事業経営を効率化できなければ、今後の介護業界で生き残っていくことは難しい、と記載しました。まだ、介護ロボット普及によるヘルパーの負担軽減が叶うまでに、時間がかかることが予測されます。つまり、どうしても介護職員の採用は継続して必要であり、決して経営が簡単になることはないといえます。そして、今後の日本において、「高齢者福祉の三原則」と近しい考え方(介護はあくまでも、できない部分のサポートであるという考え)が求められてくることで、介護業界に必要とされる経営もまた、変化が必要とされるでしょう。

我々CBリサーチは、「高齢者福祉の三原則」に寄り添った高齢者住宅事業の立ち上げから運営のご支援を手掛けています。もし、今後の経営に課題を感じつつ、具体的にどういった動きをすればよいのかわからない、という方がいらっしゃいましたらぜひお問い合わせください。我々CBリサーチは未来を共創し、介護業界の永続性に寄り添い続ける企業です。

國廣 尚頌

このコラムを書いたコンサルタント

國廣 尚頌

大学卒業後、衣料品の企画・製造・販売を行う会社に入社。店長として、在庫計画・売り場レイアウト計画・稼働計画・採用などに従事。 その後、CBグループに入社し、現在はCBリサーチにて新規事業の提案を通して、薬局経営者の方々の課題解決支援に邁進中。

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