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経営

2021.07.14

事業再構築補助金 第一回公募結果からみる傾向

  • 戦略コンサルティング
事業再構築補助金 第一回公募結果からみる傾向

今回のテーマは、事業再構築補助金の第一回公募結果についてです。
関連記事:中小企業の事業再構築に1兆1485億円(第3次補正予算案閣議決定)
※補助金の概要については、以前のコラムでもご覧いただけます。

当社は補助金コンサル自体を生業としていませんが、ご提案事業で申請を行っているクライアント企業がいらっしゃったり、別の事業展開で申請を検討している顧客も多いため、本テーマを取り上げました。
網羅的な解説は、中小企業庁の特設サイトや他の解説ブログなどでご確認ください。
参考:中小企業庁 事業再構築補助金特設サイト

本稿では、下記の3点についてお伝え致します。

採択結果とその傾向について

出典:事業再構築補助金第一回公募の結果について

ポイント1.申請時の不備が約3,000件

書類不備により申請要件を満たさなかった申請が約3,000件もありました。
同じく、特設サイト内で以下の事例が挙げられているので、おそらく、このような不備が多かったのではないかと考えられます。

■事例

  1. 売上高減少要件に必要な月別売上高が証明する書類が添付されていない。
    売上高減少として選択された年月とは異なる年月の書類が添付されている。
  2. 「認定経営革新等支援機関による確認書」 に記載された法人名等が申請者と異なる。
    認定経営革新等支援機関ではなく、申請者名で確認書が作成されている。
  3. 経済産業省ミラサポplusからの「事業財務情報」が添付されていない。
  4. 添付された書類にパスワードがかかっている、ファイルが破損している。

多大な労力を掛けて申請を行っても、申請要件を満たしていなければ、申請件数としてもカウントされません。必ず確認したいポイントです。

参考:事業再構築補助金 電子申請にあたってご注意いただくこと(事業再構築補助金事務局)

ポイント2.全枠合計の採択率は41.7%

申請が受理された件数 19,239件
採択された件数 8,016件

8,016件 / 19,239件 × 100 = 41.66%
10社に4社が採択されています。

特設サイトの動画解説によると、「この事業計画によって、なぜ顧客が増えるのか?」総じて、この点の根拠が弱いものが多かった、と振り返っています。

この採択率を高いと見るのか、低いとみるのかはそれぞれの感覚にもよりますが、
ポイント1.で触れたように 不備の事例と対策を開示していること
ポイント2.で触れたように 事業計画の弱点と対策を開示していること
事務局側としては、少しでも多くの採択案件を増やそうとしていることが、伝わってきます。

次回以降では、申請のポイントを理解している方々が多くなりますので、採択率は、やや上向きになると想像ができます。

ポイント3.幅広い業種で応募・採択されている

出典:事業再構築補助金第1回公募の結果について

業種別の「応募件数割合」と「採択件数割合」には、大きな乖離はないため、業種による有利・不利はない と言ってしまって良いのではないでしょうか。強いて特色を上げるとすれば、製造業(円の右側、エンジ色)と、宿泊・飲食業(円の左側、赤茶色)の採択率が高いこと。事業計画を作る機会が多いことや、コロナ禍以後の補助金申請への慣れなどが影響しているのかも知れませんね。

当社がご支援をしている医療・福祉(円の左上、青緑色)においては、「応募件数割合」と「採択件数割合」に、大きな乖離はありません。少なくとも、「不利ではない」と言えます。

ポイント4.特徴が現れている応募金額の分布

出典:事業再構築補助金第1回公募の結果について

応募金額別件数で見ると、「~6,000万円ゾーン」に大きなボリュームがあることが分かります。上限で申請をした企業が最も多いということです。次に「~500万円」「~1,000万円」「~1,500万円」と続きます。こちらは、緊急事態宣言枠の上限額の影響が伺えます。興味深いのは「~3,000万円ゾーン」に、急にグラフの山が出現していること。これは、3,000万円を越えると金融機関の確認が必要になるため、戦略的に3,000万円をやや下回る応募金額で、事業計画を提出した企業があったことが推測されます。

ポイント5.認定支援機関別の採択率

出典:事業再構築補助金第1回公募の結果について

認定支援機関別の採択率を、データで見ると、
採択率ベスト3は、

  1. 公益財団法人・・・約62%
  2. 中小企業診断士・・・約48%
  3. 民間コンサルティング会社・・・約47%

1.の公益財団法人は、そもそもの申請件数が少ないことを踏まえると、現実的な選択肢としては、4位の地銀(約46%)まで把握すべきでしょう。
一方で、採択率ワースト3は、

  • 税理士・・・約30%
  • 税理士法人・・・約33%
  • 公認会計士・・・約34%

得意分野の差もあるでしょうし、事業計画個別で見れば実行難易度の違いもあるはず。
そのため、一概にどちらが優れているとは言えませんが、大きなチャレンジを行う際のパートナー選びとなりますので、参考にできる情報が多いに越したことはありませんよね。

医療・介護・福祉分野での公募事例について

ポイント1.キーワード検索「薬局」でのヒットは13件

特設サイトでは、事業計画概要の概要を閲覧することができます。
参考:補助金交付候補者の採択結果(事業再構築補助金)

出典:通常枠・卒業枠・グローバルV字回復枠 採択案件一覧

こちらの一覧では、事業者名・事業計画名・事業計画などが記載されています。
「薬局」というキーワードで検索を行うと、13件の事業計画がヒットします。

  • ウイルス感染防止対策を徹底した利便性の高い未来型薬局の新設
  • 新規事業【かかりつけ薬局・地域医療に特化した調剤薬局】の開業
  • 地域密着の調剤薬局による健康づくりの格闘技ジムへの新分野展開
  • 耳鼻咽喉科・小児科の門前薬局から、高齢者在宅医療・地域連携薬局への新展開
  • コロナ禍の健康不安に対応し、地域の健康増進に貢献する薬局づくり
  • 自宅療養患者さまに訪問・オンライン服薬指導を行う調剤薬局の新設
  • ウィズコロナ・ポストコロナを見据えた在宅訪問特化型の薬局事業
  • 新店舗建設・機器導入による新規事業(カウンセリング等)立上げ
  • 医療機関と連携した地域一番の『かかりつけ薬局』をつくる
  • 在宅に特化した地域密着かかりつけ調剤薬局事業への取組

事業計画名からパッと内容が想像できるものと、そうではないものがありますが、興味深いのは、「かかりつけ薬局をつくる」という計画が採択を受けていること。薬局業界という環境の中では、言ってしまえば「当たり前」に目指している「かかりつけ薬局」の推進について、事業再構築補助金の申請がなされ、受理され、採択を受けていると言うことです。
本コラムをお読み頂いている多くの方にも、十分にチャンスがあるということです。

ポイント2.キーワード検索「在宅」でのヒットは25件

「在宅」というキーワードで検索を行うと、25件の事業計画がヒットします。
25件のうち、詳細まで読み込むと医療・介護・福祉に関係すると思われるものは半数ほど。

  • 地域の在宅介護を支える拠点となる。コロナ禍でも継続可能な看多機運営事業
  • 要介護個人居宅・高齢者入居者施設への在宅訪問事業への参画
  • 終末期のケアを主とした訪問看護サービスへの参入による地域を支えるコミュニティの創設
  • 介護・がん緩和ケア付きシェアハウス設立事業
  • 在宅高齢者向けの配食事業
  • 個人向け在宅介護に特化した体験型施設の運営と新規顧客層の開拓

申請している事業者のなかには、薬局企業もありますし、工務店など住宅関連事業者の名前もあります。在宅医療や在宅介護は、他業界から見ても注目されていることが伺い知れます。

出典:平成28年3月 地域包括ケア研究会報告書(厚生労働省)

考えてみれば、そうかも知れません。
医療・介護は、数少ない成長産業と見做されており、高齢者の生活関連産業まで含めると2025年には、その市場規模は100兆円規模になるとの見方もあります。その医療・介護が目指す姿に「地域包括ケアシステム」があり、それを成立させるキーワードが「在宅医療」であり「在宅介護」ですからね。注目をされているというのも、納得です。

ポイント3.「医療」「介護」「高齢者」はヒット多数

「医療」「介護」「高齢者」などのキーワードでは、ヒットがあまりにも多くなるため本稿では、ご紹介しきれない件数となります。いわゆるビッグワードですね。そのため、いま私どものご提案領域である「地域包括ケアシステム」に関連しそうな事業計画をピックアップを行うと、以下の事業が見つかりました。

  • 訪問介護と連動した自由と安心を両立した高齢者向けマンション賃貸業
  • グループホーム事業参入による、地域の包括的な健康支援体制の構築
  • 訪問通所介護が困難となった要介護者に対する老人ホームの提供
  • 要介護度の高い高齢者をターゲットとしたサービス付き高齢者向け住宅事業への進出
  • 高齢者のコミュニティーを担うリハビリ型高齢者入居施設の開設・運営
  • 有料老人ホーム・介護事業
  • 看護サービス付介護施設(ナーシングホーム)開業計画
  • 自社事業の有機的連携による高医療依存者向け看護事業の開始

事業計画名から推測をすると、必要資金の大きさが推測される事業ですね。
医療・介護・福祉領域の事業者だけでなく、宿泊業や飲食業の事業者の名もあります。

その他のトピックス

前述の解説動画において、印象的だった解説についても触れます。
こちらは、一度検討された方であれば理解頂けるかと思いますので、端的にまとめさせていただきます。

●「売上高10%要件」について

  • 仮に計画期間で到達できなくとも、返納を求めない
  • 本業のダウンサイジングを行い、ダウンサイジング後の売上高の10%でよい

●審査項目のうち、「共同体の構成」について

  • 事業者同士が協力して、大きな事業再構築の達成を期待している
  • 審査において加点となり、仮に最大6,000万が3社集まれば1.8億円の補助額になる

勝手に前提だと思い込んでいたポイントが、実は違いました。事業再構築補助金を通じて、中小企業庁が伝えたいことは『「生産性の向上」「利益率の改善」を目指すべし』であることに改めて気づかされます。

不採算事業の整理、選択と集中、ダウンサイジングは、生産性向上につながります。共同体の形成、統合、大規模化は、利益率の改善につながります。だから、今回の補助の対象になるし、加点要素にもなる。ということです。


以上、ざっと第一回公募結果について振り返りましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の調査のなかで、「そんなことで、申請が受け付けられないのか」との気づきや、「(奇抜ではない)普通の事業計画が採択されている」ことへの驚きがありました。
本稿をお読みいただいた方へ、少しでも参考になれば幸いです。

CBリサーチ編集部

このコラムを書いたコンサルタント

CBリサーチ編集部

私たちCBリサーチは、医療・介護・福祉業界に特化した「戦略コンサルタント」として「地域包括ケアシステム」に沿った戦略構築と実行支援を行い、お客様の未来を共創する会社です。様々な新規事業展開をワンストップで共創します。

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