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介護・福祉

2024.05.07

マイナス改定をポジティブに?【訪問介護】

  • 介護報酬改定
マイナス改定をポジティブに?【訪問介護】

2024年の介護報酬改定について、訪問介護は今回まさかのマイナス改定となりました。
訪問介護の基本報酬に関して、今回2~3%の引き下げとなっています。
ヘルパーの求人倍率は15倍ともいわれ、事業者からは「ホームヘルパーが足りない」という声が上がり、運営に苦戦している方も多く聞きます。
東京商工リサーチによると、2023年の「老人福祉・介護事業」の倒産は122件で過去2番目の記録、この内「訪問介護事業者」の倒産は過去最多58件を9件上回る67件に達したと言われています。
こんなに苦しい状況なのにマイナス改定なんて。

収支差率とは利益率

介護の改定率に関しては、この収支差率が影響する要素と言われています。
この収支差率とは一体どんなものなのでしょうか。

収支差率=(介護サービスの収入額-介護サービスの支出額)/介護サービスの収入額

つまり、一般的に言われる損益計算書上の利益率(営業、経常、税引前後)とほぼ同意となります。

訪問介護については、令和5年度の実態調査(令和4年度決算)の結果として、この収支差率が
7.8%(税引前・補助金含まず)、
8.1%(税引前・補助金含む)、
7.7%(税引後・補助金含む)、
となり、前年比約+2.0%となっています。
本調査は2023年5月、33,177事業所すべてを対象に実施されました。
調査回答数は16,008件で、48.3%程度となっています。

厚生労働省:令和5年介護事業経営実態調査結果の概要

他の介護サービスと比べると、訪問系のサービスの中にはこれを上回るところもありましたが、施設・入所・通所系は収支差率がマイナス~3%くらいのところも多くありました。
従って、介護業界の中では比較的利益率の高い訪問介護でしたが、その他の業界と比べても一般的に悪くはないですが、かといって決してとても高い利益率と言えるサービスでないことはよくわかります。

そもそも回答率は半分以下です。
しかも、赤字経営も多いと言われる居宅の訪問を中心にサービスを行う事業所と、高齢者住宅併設の訪問介護を区別したものではありません。従って、回答者の経営実態に偏りがあるのも想像できます。
これが業界の実態を示している、と言い切るには少し乱暴な気もします。

だから報酬をマイナスにされちゃうなんて、と多くの事業主が思ったところだと思います。

ですが、よく考えてみましょう…

しかし、今回は処遇改善加算がプラスとなったので、併せて考えることで全体ではプラスとしています。
処遇改善加算は使い道を限定されている加算なだけに、プラス改定と言われても窮屈な感じはします。
ただ訪問介護は、ヘルパーの仕事量に連動して出来高で報酬を得るビジネスモデルですので、運用の仕方や使い方によって、ちゃんとプラスとすることができるのでは、とも考えています。

厳しいことを言うと、そもそも「訪問系」の「定期サービス」なんだから、大きな固定費などはかからず、お仕事の分だけ人員を動かすことができれば経営が苦しくなることなんてないはずなんです。
ちなみに、住宅併設・敷地内の訪問介護事業所に関しては、住宅入居者の訪問介護サービス利用率により更なる集中減算もありますが、移動時間がほぼないことを加味すると、収益性の高い事業と言えます。

見方によっては“儲かる介護サービス”と羨ましがられ、運用の仕方で工夫もでき、減算の対象にもなってしまうほどの訪問介護サービス。
施設や入所と違って、受けられるお客様の数は無限大です。

社会保障費は有限で、無駄な利用の削減に向けた取り組みは進んでいます。
地域包括ケアシステムの推進を考えると、団塊の世代の多くがまもなく要介護認定者となってくることが想像できます。
ご自宅に住む方、高齢者住宅等に住む方は今後も増え続けるんです。
従って、在宅介護のマーケットはまだまだ拡大トレンドにあります。

訪問介護サービスはトレンドをおさえたいい事業です

『表面的な部分だけ捉え、風当たりが強い』なんて悲観せず、周囲の事業者よりも先に拡大トレンドにある事業を行っていると自信を持ち、今できる工夫を最大限に行いながら、より早く市場をおさえていきましょう。

事業を上下左右に、視点を変えて視野を広く捉え、よく観察し想像し、社会のためにいい仕事をしていきましょう!
事業拡大に向け、現状足りていないのは、報酬単価でしょうか、お客さまでしょうか。
マーケティングはできていますか?本当に地域に求められているサービスを提供できていますか?

CBリサーチでは、貴社の事業拡大における戦略を提案し、実務のサポートを行います。
是非お気軽にご相談ください。

東海林 拓

このコラムを書いたコンサルタント

東海林 拓

東日本で展開する企業で、事業部運営を行い、複数の新規事業の導入・立上げに従事。その後、CBグループへ参画し、東日本で病院・薬局の経営支援を行う。クライアントの収益改善に向け、M&Aサービスはじめ、様々なサービスのご提案・ご提供により新規開拓を実現。

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