介護・福祉
2024.07.25
物価高と人材不足に直面した介護業界の今後の戦略について
2024年、日本の介護業界は厳しい状況に直面しています。
物価高と人材不足が深刻化する中、2023年には介護事業者の休廃業が過去最悪を記録しました。
(倒産件数も過去2番目の高さ)
この厳しい現実を乗り越えるため、国は経営の大規模化・効率化を進めるよう働きかけています。
以下では、国が推進している大規模化・効率化の内容について確認したいと思います。
参考:株式会社東京商工リサーチ『介護事業者の倒産は過去2番目、休廃業・解散は過去最多の510件 人手不足、物価高騰で「訪問介護」の倒産は最多更新』
物価高と人材不足の影響
まず、物価高は介護事業者の経営に大きな負担をもたらしています。
施設や事業所で提供する食材費、現場で使う医療用品の価格高騰、光熱費の高騰により運営コストが上昇、収益は圧迫されています。
また人材不足は介護業界にとって恒常的な問題となっており、高齢化社会が進む中でその影響は一層深刻化しています。
介護職員の確保が難しくなると、サービスの質が低下し、利用者の満足度も下がる可能性が高くなります。
大規模化と効率化の必要性
このような状況を踏まえ、介護事業者が生き残るためには、大規模化および効率化が不可欠です。
大規模化
介護業界における大規模化とは以下のことを指します。
- 介護サービスの規模の拡大
- 法人内の介護施設・事業所の増設
- 複数の法人の合併・事業譲渡
大規模化を行うことで以下のメリットがあります。
コスト削減 | ある程度規模が大きくなると、おむつ等の物品やサービスの購入において、固定費の割合が相対的に減少したり、購入先との価格交渉力が増すことなどによりスケールメリットが実現でき、費用の削減を実現しやすくなります。 |
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人材確保 | 大規模な組織は人材育成プログラムを充実させることで、職員に合ったスキルアップが図れ、資格や経験の育成や教育体制に魅力を感じた方からの応募が増えます。 |
サービスの多様化 | 多様なサービス(デイサービスや訪問介護、訪問看護など)を提供することで、利用者のニーズには幅広く対応できます。複数の介護施設を運営し、地域ごとの特性に応じたサービスを展開する方法もあります。 |
このような大規模な事業展開は、地域密着型サービスを維持しながら、経営の安定化を図るための有効な手段です。
効率化
効率化には、業務プロセスの見直しやIT技術の導入が含まれます。
効率化の具体例としては以下が挙げられます。
業務プロセスの標準化 | 誰がやっても同じやり方になるよう介護業務の標準化により、作業の無駄を削減し、職員の負担を軽減します。 |
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IT技術の活用 | 電子カルテシステムや介護ロボットの導入により、業務の効率化を図ります。 |
特に介護ロボットの導入は注目されています。
ベッドから車いすへの移乗をサポートする介護ロボットを利用することで、職員の負担を軽減できます。
またITシステムを導入することで情報の一元管理が可能となり、迅速な意思決定を支援することが可能です。
大規模化・効率化が必須な時代の到来
2024年の介護業界は物価高と人材不足という厳しい環境に直面していますが、
大規模化と効率化を進めることで、これからの課題を乗り越えることが可能です。
規模の経済を活かしたコスト削減や、IT技術を活用した業務を実現し、利用者に質の高いサービスを提供することが求められます。
参考資料を基に具体的な施策を検討し、実行に移すことで、介護事業者は未来に向けて確固たる基盤を築くことができるでしょう。
大学卒業後、有料老人ホームに入社。現場業務から相談員を経て、介護施設の施設長として従事。入居率70%の施設を半年で95%に向上させる。他に人材採用、入居者獲得営業など幅広い業務を行う。現在は経験を生かし、事業所立ち上げから実務までの業務支援に従事。