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高齢者住宅

2025.03.28

現場のリアル)有料老人ホーム開所後の現場の変化、目指すは地域の活性化へ【セミナーレポート】

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現場のリアル)有料老人ホーム開所後の現場の変化、目指すは地域の活性化へ【セミナーレポート】

2025年2月1日(土)に開催した弊社主催セミナーに有限会社みはる調剤薬局の代表取締役 濱田 雅博様、薬剤師 佐藤 大様、介護事業責任者 飛澤 学様にご登壇いただきました。
2023年10月に福島県田村郡三春町で有料老人ホーム「多喜の家 アカネサス」をオープンされ、1年以上たった今、率直な感想を含め、患者様や連携先とのコミュニケーション、介護事業と薬局事業の社内連携について、お話を伺いました。

セミナー詳細:【特別対談】なかなか聞けない現場のリアル、患者と連携先とのコミュニケーションから生じるシナジー

「働きやすく賑やかな職場に」
立ち上げから参画している介護スタッフの想いとは

ーーーまずは介護事業について飛澤様にお話を伺いたいと思います。
「多喜の家 アカネサス」立ち上げに伴い、どのような採用活動を行いましたか?

飛澤様:ハローワークや求人広告媒体への掲載、住宅の前にのぼりを立てて採用活動を行っていました。
その中で介護を経験されていた方を採用したところ働きやすいと思っていただけて、その方の声掛けもあり30名程度の応募がありました。

ーーーその方はどこが働きやすいと感じられたのでしょうか。

飛澤様:介護事業を経験された方は、介護施設で働くのはきついイメージを持たれていますが、「多喜の家 アカネサス」の仕事は比較的内容が落ち着いていると思います。
また私自身、現場の雰囲気作りを大切にしているため、意見は必ず認めて、やりたいことはやっていただき楽しく仕事をしてもらうことを心がけています。その甲斐あって、働いていてとても楽しいと言っていただけます。

ーーー入居者様とのコミュニケーションについてはいかがですか?

飛澤様:コミュニケーションはとても盛んで、積極的に声掛けをしていただいているので、いつも賑やかな現場になっています。

ーーー先ほど30名ほど応募があったとおっしゃっていましたが、スタッフの入れ替わりは多いのでしょうか。

飛澤様:立ち上げから1年4か月たちましたが、今まで退職された方は2名だけです。他の事業所に比べて、例えばハローワークだとお給料が他よりも少し高めに設定していたり、訪問介護は車で移動ではなく、高齢者住宅に行くという働き方を記載していました。

ーーーワンオペではなく、仲間と一緒に働けるので働きやすいというイメージを持っていただけたんですね。飛澤様は立ち上げの段階で入職されていますが、仕事の中で気に入ってるポイントは何かありますか?

飛澤様:立ち上げ時から関わらせていただいたことは貴重な経験だったなと感じています。業務の責任を背負っていましたが、一緒に立ち上げに携わった方と仕事を分担して、お互い信用し合いながら対応できたのが良かったです。

ーーー信用できるパートナーと一緒に立ち上げができたんですね。

飛澤様:そうですね。
また現在も濱田社長から全面的に業務を任せていただいています。しかし期限に間に合わず事後報告になってしまった際に「そうなんだ、今までやってくれてありがとう」と言っていただけて、その後の業務を濱田社長が請け負ってくれ、結果を報告してくれた際はとても嬉しかったです。自分自身も現場ではスタッフにやりたいことをやっていただき、責任はすべて取るというスタイルで働こうと思いました。

ーーー信頼して任せてもらうことはうれしいですよね。濱田社長は意図的にこのようなスタイルで進めようと思われたんですか?

濱田様:飛澤さんがまず信用できる人材だというところと、私自身介護業界を知らないので、その分飛澤さんに動いていただく必要がありました。
またCBリサーチがうまく関わってくれているので、すごく安心感がありました。

ーーーありがとうございます。お二人は信頼関係の下、いいバランスでやられているんだなと感じました。

濱田様:飛澤さんには立ち上げ当初から参画していただいているんですけど、気づいたことはすぐに行動し、意見もどんどん言ってくださるので、そういった面からも信用できるなと思いました。

ーーー立ち上げから携わってきた中での率直な感想や苦労した点、モチベーションなど伺えればと思います。

飛澤様:「入居者様に健康になっていただきたい」「楽しい職場にしたい」という想いがあります。
今まで生きてきた中で、事業立ち上げからのこの1年4か月が一番早く感じるくらい本当に楽しく働いていました(笑)
大変だったことは、コロナのクラスターで従業員も感染してしまったときです。

ーーーそうですよね、ちなみに他に苦労したときにどのように乗り越えたか、エピソードがあれば教えてください。

飛澤様:申請や加算関係をすべて調べて対応するのですが、先ほどお話ししたように濱田社長がサポートしてくださるので、プレッシャーはあるものの安心して取り組むことができます。

調剤薬局スタッフから見た現場の変化

ーーー続いては薬剤師の佐藤さんにお話をお伺いたいと思います。実際に有料老人ホームがオープンした後の薬局側での変化は何かありましたか?

佐藤様:実際に在宅調剤の対応件数が増えたところです。薬局内でも在宅調剤を増やしたいと奮闘していたのですが、ケアマネジャーのところに訪問してアプローチはしていたものの、なかなか在宅調剤の件数が増えない苦しい時期がありました。
門前クリニックは訪問診療を行っておらず、薬局だけで新たな在宅調剤を獲得するのは難しいのではないかと思っていたので、有料老人ホームで在宅調剤の件数が増えるというところは大きな変化だと感じています。
ただ在宅調剤の件数が増えることによって、店舗業務の対応が難しくなることもありますが、訪問時間の融通が利くので、時間をうまく使って対応できればと思っています。

ーーー社内の有料老人ホームだとある程度時間の融通も効くので、うまく対応できるところがいいところですよね。在宅調剤を増やそうと活動していた際の苦労があればお聞かせください。

佐藤様:福島県内の動きとして「お試し訪問」というものがあります。お試しで訪問して、そこから在宅調剤の契約に繋げるという取り組みがあったのですが、そこから契約に繋がったのは、20件中1,2件あるかないかでした。在宅調剤を新規で獲得するのは大変だなと実感しました。

ーーー契約に繋がらなかった理由は何でしょうか?

佐藤様:憶測ではありますが、処方元の医師が「在宅調剤でいきましょう」と決断されなかったので患者様自身、訪問はなくてもいいかなと思ってなかなか繋がらなかったのかなと思います。

濱田様:ご家族がお薬を運んでくれるという方もいらっしゃるので、患者様としては今までとあまり変わりないと感じられたのかと思います。

ーーー薬局だけではなく、医師やケアマネジャー、ご家族全員の理解が必要になりますよね。

濱田様有料老人ホームをみはる調剤薬局で運営してるというのは安心感にもなっていると思います。
介護スタッフが入居者様に「うちは薬局もあるんだよ」と伝えることで、在宅調剤に繋がるというのはすごくスムーズですよね。

飛澤様:なにかあったらすぐに問い合わせができる体制というところはすごく喜んでいただけます。
現在も何かあると薬剤師に連絡取って、すぐにアドバイスを受けています。入居者様からの在宅調剤はほぼ獲得できています。

ーーーすごいですね。繋がる患者様が増えるということは、繋がるケアマネジャーや医師は増えましたか?

佐藤様:そうですね、新しく繋がるケアマネジャーもいます。
ケアマネジャー中心の担当者会議や連携会議を「多喜の家 アカネサス」で開いていただき、私たち薬剤師も参加しています。「多喜の家 アカネサス」を中心にケアマネジャーと繋がっていくことで、関係性が構築できたと思います。 担当者会議や連携会議は薬局の加算の算定要件に入るので、以前は取れていなかったですが、いまでは加算条件をクリアできています。

濱田様:食堂で行っている会議の様子を見てみると若手の薬剤師の方も意見を言えるような雰囲気を感じました。そういう意味でのスキルアップにも繋がっているんじゃないかと思います。

佐藤様:薬剤師が担当者会議や連携会議に呼んでもらう機会がなかったので、いい取り組みだと思います。

飛澤様:介護スタッフから開催日を薬剤師に連絡して参加いただいています。お薬について意見をいただくこともできるので、有意義な会議を開催できています。

ーーー連携先との繋がりも良くなっているということは、直接在宅調剤の紹介にも繋がっていますよね。
先ほど濱田社長がおっしゃっていたように新人の教育の場になっているというのは、社外の連携会議だと新人の方は参加しづらいものなのでしょうか?

濱田様:ハードルは高いかと思います。ただ社内のスタッフがいる場だとしたらハードルが下がると思うんです。

飛澤様:入居者様のところに訪問する時も介護スタッフと一緒に顔出しすると、次回から一人で訪問できるようになりますね。

ーーーコミュニケーションという面でもハードルが低いからやりやすいということですね。

佐藤様:新人に限らず、元々勤務している薬剤師でも在宅調剤を経験したことがない方もいるので、新しく挑戦される薬剤師もいます。

ーーー所属している薬剤師の方は皆さん「多喜の家 アカネサス」に出入りしたことはあるんですか?

佐藤様:そうですね。2名の新人は今まで在宅調剤に行ったことがなかったのですが、初めて担当するということで訪問してもらいました。

飛澤様:最近では新人の方から連絡が来て、「お薬がなくなるので受診を促してください」と言われました。
入居者様の状態も聞かれますし、すごく成長されてるなと感じます。

濱田様:ちゃんと責任感を持って取り組まれてるんですね。

ーーー全体的にいい方向に取り組みが進んでいるとは思いますが、その中で課題やまだ実現できていないことなど、なにかありますか?

佐藤様:訪問させていただいている方一人ひとりのお薬手帳のスタイルが違うので、管理方法を考えています。
あとはお金関係ですかね。入金のやり取りをスムーズにできないかという課題が出てきています。

ーーー今はどのようなオペレーションになっているんですか?

飛澤様:月末に入居者様に有料老人ホームの月額と併せてお薬の分も請求させていただいています。まとめて翌月に入る状態です。なので実際に投薬してから2か月遅れで入金されるシステムになっているのが現状です。

ーーー外来のように窓口でやり取りするのとは違いますよね。飛澤様から薬局側にリクエストや聞きたい事はありますか?

飛澤様:受診に行けない入居者様のために配置薬があればいいなと思いました。

ーーー使い方などすぐに相談できるので、いいですよね。御社はもともとOTCの販売にも力を入れていると思うんですけど、保険調剤以外の商品の出入りも増えましたか?

佐藤様:そうですね、OTC商品もちょっとずつ増えています。主力商品であるOTCを販売に繋げて「OTC旋風を巻き起こしたい」と言っている薬剤師もいます。(笑)
今後は入居者様に対して健康教室や食育講演を開催するなど、新しい挑戦をしたいという声もあがっています。

「多喜の家 アカネサス」から繋がる地域の輪

ーーーそれでは濱田社長に色々と聞かせていただこうかと思います。まず住宅事業を始められた想いを教えてください。

濱田様:以前から介護業界には興味がありました。在宅調剤に力を入れ始めた頃にそういう想いがあったんですよね。
その中で色々なデータや情報を見ると地域の課題がたくさん見えてきました。高齢者の人数や施設の数、クリニックに対する薬局の数とか。
そこに我々がアプローチしながら事業を前に進められる方法は何かないかと考えていたのがきっかけです。薬局事業や介護事業、カフェ事業を通して地域を活性化するのが一番の目標です。

ーーー脱線してしまうかもしれませんが、御社が運営しているカフェに対して興味を持たれる方が多いかと思うのですが、カフェのコンセプトや、運営する上で大切にしていることがあれば教えていただきたいです。

濱田様:高齢者の方に若返ってもらうカフェというコンセプトがあります。60代・70代の方に気持ちが学生時代に戻っていただるように、懐かしいレトロな雰囲気のカフェになっています。また提供している食べ物もこだわって健康面にアプローチできるカフェを作りました。カフェでは健康教室や食育セミナーを月に4回ほど行っています。

ーーーなるほど、だから昭和レトロ風なんですね。
弊社では調剤薬局のみ運営していた法人様が有料老人ホームを中心に事業を多角化していくことを一つのテーマとしてご支援をさせていただいていますが、いろんな事業に関わりたい、エリアを増やしていきたいなど、今後のビジョンはありますか?

濱田様:ありますね。最近では飛澤さんから2棟目やりましょうと言っていただきます。スタッフからそういう声が上がるのはすごい嬉しいですね。

ーーー三春町は人口が1万7千人ほどの町で、決して大きい地域ではないと思います。その中で事業をやられながら、さらにエリアを拡大していこうと思われているのは、すごいなと率直に思います。

濱田様:今後人口が減少していくことも一つの理由ですが、三春町に住んでいないスタッフから「うちの町にも作ってください」と言っていただくのも理由の一つです。

ーーー違う町から来てるスタッフの方もいらっしゃるということですね。調剤薬局が他の事業に着手するということ自体が業界では珍しいと思うのですが、社内や社外から反対意見はありましたか?

濱田様:建物も事業自体も大きいので不安はあったかもしれません。
ただ事業を進めるにあたって、CBリサーチがコンサルタントとして入ってくれて、事業を成功させてもらう形なので、あまり薬局に影響はなかったです。

ーーー大きな投資だと思うのですが、踏み切ったポイントはありますか?

濱田様:大きいビジョンを持っていたということと、CBリサーチからいただいた計画表や私の想いを聞いていただいて信用してみようと。そこが大きかったのかもしれないですね。

ーーーありがたいです。

濱田様:運営の支援がなかったら途中でやめようっていう決断になってたかもしれないです。また父と話した時に、今までよりもいい反応だったんですよね。それもよかったなと思います。

ーーー最後に会社の今後のビジョンや、地域に対する想いなど伺えればと思います。

濱田様:先ほど伝えたように『地域を活性化させる』という想いが一番強くあります。
いかに地域を元気にするかというのは、自分だけでは実現できません。カフェや薬局、有料老人ホームを通していろんな人たちが関わってくれればいいなと思っています。介護事業をスタートさせていろんな職種の方との繋がりができて、広がりがすごいと感じています。この繋がりで、今後さらに地域を活性化していきたいというのが私の想いですね。

ーーーありがとうございます。
CBリサーチとしても、しっかりお手伝いさせていただこうと思っています。
現場の方がより働きやすい環境を一緒に作っていけたらなと思ってますので、今後ともよろしくお願いいたします。
本日はお時間をいただきありがとうございました。

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CBリサーチ編集部

このコラムを書いたコンサルタント

CBリサーチ編集部

担当コンサルタント:東海林 拓

地域のどんなご要望でも様々な形でお応えしてきた、有限会社みはる調剤薬局様が、「在宅介護支援住宅」のオープンをされました。多くの方の様々な思いが詰まった住宅です。有限会社みはる調剤薬局様が手掛けることで、その可能性は無限大だと感じています。三春町は人口は約1.7万人ほどの町ですが、地域の調剤薬局として長く信頼されてきた実績もあり、良いスタッフの採用から、入居者様のお問い合わせまで、大変スムーズな立ち上がりを実現できています。“住まい”という新しいツールを活かして、更なる地域貢献・事業発展が期待できる、そんな企業様です。

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