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経営

2025.03.14

介護事業における財務分析:損益分岐点分析の活用法(訪問介護事業編)

  • 戦略コンサルティング
介護事業における財務分析:損益分岐点分析の活用法(訪問介護事業編)

介護事業を安定的に運営し、将来にわたって持続可能な成長を実現する為には財務分析が欠かせません。
経営判断に役立つ分析手法の一つ、損益分岐点分析をご紹介します。

損益分岐点分析の概要

損益分岐点分析は、売上と費用のバランスを示し、どの時点で利益がゼロになるかを計算する手法です。

訪問介護事業においては、固定費と変動費の関係を理解することがポイントです。固定費は、訪問件数に関係なく発生するコストであり、変動費は訪問件数に応じて増減するコストです。

損益分岐点(Break-Even Point)は、売上と費用が一致する点で、これを下回ると赤字が出て、上回ると利益が得られることになります。具体的には、固定費をカバーするために必要な売上高や訪問件数を割り出し、経営の目標として設定します。

訪問介護事業における費用の分類

(1)固定費
固定費は、訪問件数や利用者数に関わらず支払わなければならない費用です。主な固定費には次のものがあります。

  • 事務所の賃料
  • 事務員や管理職の給与
  • システム費用(介護記録システム、請求管理システム等)
  • 保険や税金

これらは毎月定期的に発生し、事業規模に関わらず一定の金額が必要です。

(2)変動費
変動費は、訪問件数やサービス提供の量に応じて変動する費用です。訪問介護事業では、ヘルパーの給与や交通費などがこれに当たります。

  • ヘルパーの給与(訪問1回ごとの報酬や時給)
  • 交通費(ガソリン代、公共交通機関費用)
  • 消耗品費(手袋、消毒液等)

これらの費用は、提供するサービスの回数や時間に比例して増減します。

損益分岐点の算出と活用

損益分岐点を正確に把握することで、どの程度のサービス提供が必要か、どの費用が過剰になっているかを分析することができます。損益分岐点を計算することにより、事業の黒字化に必要な最低限の訪問件数や売上高を把握することができます。この点を越えた場合に利益が発生し、それ以下だと赤字が続くという事実が明確になります。

損益分岐点を求めるための公式は以下の通りです。

損益分岐点売上高の計算式

損益分岐点訪問件数の計算式

このように、必要な売上高や訪問件数を把握することができます。訪問介護事業においては、これらの数値を基に経営戦略を立てることが非常に重要です。

損益分岐点を下げる戦略

(1)固定費の最適化
訪問介護事業における固定費は、事業の規模に関わらず毎月発生するため、これを最小限に抑えることが重要です。

  • オフィスのコスト見直し:例えば、事務所の立地を見直したり、賃料が低いエリアに移転することで、コストを削減できます。
  • 管理職や事務員の人員配置の見直し:システムを導入して効率化することで、人的リソースを削減し固定費を抑えることができます。

(2)変動費の削減
訪問介護事業の変動費は、訪問件数に応じて増減するため、効率的な運営が求められます。

  • 移動距離の最適化:訪問エリアを効率よく組み合わせることで、交通費や時間を削減できます。
  • ヘルパーの勤務シフトを最適化:訪問先を近隣地域でまとめることで、交通費・時間の無駄を防ぎます。

(3)売上単価の向上
売上単価の向上には、高付加価値のサービスを提供することが有効です。

  • 自費サービスの導入:介護保険外のサービス(買い物代行、見守りサービスなど)を追加することで、売上単価を上げることができます。
  • サービス内容の差別化:身体介護など報酬が高いサービスを強化し、より高額のサービスを提供することが利益率を改善します。

最後に

損益分岐点分析を定期的に行うことで、訪問介護事業の経営改善に繋がります。具体的には、経営状況をリアルタイムで把握し、収益が減少している場合に迅速に対応できます。特に、売上が伸び悩んでいる月や年度であっても、早期に損益分岐点に達していないことが分かれば、営業強化やコスト削減の対策を打つことができます。
また、損益分岐点分析を通じて、経営資源を最適化し、無駄を減らすことが可能です。これは、訪問介護事業における競争優位性を高め、持続的な成長を促進するための重要なステップとなります。

岡村 裕太

このコラムを書いたコンサルタント

岡村 裕太

大学卒業後、商社でプロジェクトマネジメント、貿易、国内営業等に従事。ビジネススクールを卒業した後、訪問看護ステーション、地域密着型通所介護の立ち上げ、経営等、運営全般に携わる。これまでの多様なビジネスの経験による問題解決力と介護業界で培った経験に基づき、お客様に実践的なソリューションを提供できるよう邁進中。

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