経営
2020.12.18
賃貸 vs 持ち家~高齢者が直面するお住まいのジレンマ
本コラムでは、不動産業界出身の担当から見た、高齢者のお住まいに関する課題とビジネスチャンスをお伝えしたいと思います。
高齢者のお住まいに関するお悩み
賃貸派:民間賃貸住宅の受け入れ問題
自宅に関して、世の中賃貸派、持ち家派というように意見が分かれています。賃貸派の方に対して、「高齢になったら、部屋を借りるのは大変ですよ」というのは住宅営業マンがよく口にするセールストークです。
これは住宅を売るためのセールストークではありますが、賃貸住宅の仲介や管理から得た所感でもあると思います。調査データからも分かるように、約6割の大家さんは高齢者の受け入れに対して拒否感を持っています。
また、大家さんが高齢者の受け入れに拒否しなくても、保証会社の家賃債務保証を付けないと借りられないケースが多くあります。民間保証会社の家賃債務保証の審査状況を見ると、高齢者は審査を通りにくいという傾向が見られます。
高齢者が賃貸住宅を借りにくい理由は、孤独死の問題、家賃滞納のトラブル、近隣とのトラブルなどが挙げられています。名古屋市で行った調査では、孤独死、家賃滞納、近隣とのトラブルに関して、居住者が高齢者単身世帯もしくは高齢者夫婦のみの世帯の場合はそれぞれ1位、2位、2位という結果が出ています。(※1)
また、名古屋市での調査では、住宅に困窮し福祉部局等へ相談に訪れる要配慮者の中で最も高い割合の44.1%を占めているのは高齢者です。特に「70代」は22.0%、最も多くなっています。ここから、賃貸派高齢者の窮境が見えてきます。
※1名古屋市・名古屋市住宅確保要配慮者居住支援協議会「「民間賃貸住宅の入居受入れに関するアンケート調査」令和2年1月
高齢者のお住まいに関するお悩み
持ち家派:居住環境の不安
一方、持ち家派の高齢者でも住まいに関するお悩みをお持ちです。国土交通省住宅局の住生活総合調査から、住宅の評価の中で、最も不満率が高い個別要素は「高齢者への配慮(段差がない等)」(47.2%)であることが分かります。
面白いことは、同調査で子育て世帯(長子が17歳以下の世代)が住宅及び住居環境に関して重要と思う項目の中で、「高齢者への配慮(段差がない等)」が重要と思う割合が最も低く(3.8%)なっています。子育て世帯は住宅を購入するメイン層であり、購入時に「高齢者への配慮(段差がない等)」をあまり気にせず、高齢になることに伴って、該当項目に対する不満率が高まっていくことは推定できます。
住宅内の転倒、浴槽への転落による溺⽔などの事故が多発する背景には、持ち家の居住環境は「高齢者への配慮(段差がない等)」が足りない問題が存在します。
お住まいのジレンマから生まれる
高齢者向け住宅のビジネスチャンス
賃貸派も持ち家派も高齢になることに伴い、住まいに関するお悩みとリスクが大きくなり、まさにお住まいのジレンマです。そこで、高齢者向け住宅のビジネスチャンスが生まれます。一部の方にとって、老後の住まいとして高齢者向け住宅は最善の選択肢とも言えるのでしょう。
我々が提案する高齢者向けの住宅の業態は賃貸業ですが、一般の賃貸住宅よりも、高齢者の安全を考慮した建築、設備面を整備しているし、高齢者の心身状態に合わせた運営方法も導入しております。この辺のノウハウはまたお伝えする機会を頂ければと思います。
私たちCBリサーチは、医療・介護・福祉業界に特化した「戦略コンサルタント」として「地域包括ケアシステム」に沿った戦略構築と実行支援を行い、お客様の未来を共創する会社です。様々な新規事業展開をワンストップで共創します。