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高齢者住宅

2020.11.27

高齢者に本当に必要なものは?住まいの考え方

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高齢者に本当に必要なものは?住まいの考え方

今回のテーマは『高齢者に本当に必要なものは?住まいの考え方』を解説いたします。

高齢者が困っていること

質問です。
薬局に来られる高齢者の困っていることって何ですか?

  • 買い物
  • 移動手段
  • 食事
  • 掃除、洗濯など身の回りのこと

このように、衣食住に関わることが多いのではないでしょうか。

人が求めるもの

では、なぜ衣食住に関わることが多いのか。
それは、人の欲求というのは5段階で構成されると言われています。

マズローの欲求5段階説

  1. 生理的欲求(食べる、寝るなど)
  2. 安全欲求(安心して暮らしたい)
  3. 社会的欲求(集団に所属したい)
  4. 承認欲求(人に認められたい)
  5. 自己実現欲求(自分らしく生きたい)

1から順に満たされて、その上で次の欲求に向かうというのが「マズローの欲求5段階説」の考えです。
欲求への考え方は人間の本質的なものであり、現在も100年前、1000年前も変わらずに欲求の段階を持っています。

高齢者は衣食住に不安を抱えている

高齢者は身体能力が徐々に低下していきます。
自分でできることに制限が出てくると「1」「2」が満たされないことが増え、衣食住に不安が集中してしまう、ということかと思います。
ただ、30年前に比べると衣食住への不安を抱える高齢者の割合は、大きく増えたのではないでしょうか。
それは高齢者を取り巻く環境が変わっているからです。

年を重ねるごとに身体能力が低下していく高齢者を支える人が周囲にいれば、高齢者も安心して生活することができます。しかし、支える人がいない、ということは大きな問題点です。

見守りのある高齢者の住まいの整備

一人暮らしの高齢者の割合は大きく伸びました。
日本全国では、1985年から2015年の30年間で全世帯に対する割合は、1985年:3.1%、2015年:11.7%と、8.6ポイントも増加しています。(推計値では、2040年:17.7%に。)

見守りのある高齢者の住まい

こういった状況を社会で支えるために、見守りのある高齢者の住まいの整備が進められています。
その住まいの制度として存在するのが「サービス付き高齢者住宅」です。
ただ、この制度の中身をみると、先述の欲求の段階で1から5までの欲求がすべて満たされるという視点が強く、非常に過剰になっているように思えてなりません。

制度の内容と実態があっていない?

例えば、部屋の広さは25㎡以上必要とされています。これは和室で言うと約15畳です。共有スペースがあったとしても、18㎡で約10畳です。人の支えが必要な高齢者にとっては、広すぎるものです。
確かに、ある程度体力があり、制限の少ない方にとっては必要なスペースかもしれません。ただ、これを必要としている方は実質多くないのが実態です。
ちなみに、この広さでみる全国のサービス付き高齢者住宅の1月の費用は平均で約14万円で、厚生年金の受給者で入居できる方は一部でしかない、ということです。

高齢者の状況にあった住まいとは?

先述の欲求の段階や実際の高齢者の状況を踏まえて、必要なサービスを改めて考え直す必要があると思われます。「自分らしく生きる」という欲求を否定する気は全くなく、むしろこういった社会を実現すべきです。
ただ、そうするには、ステップが必要です。それが、5まで満たせる人の数を最大にできる方法ではないでしょうか。

2025年以降、先述した、衣食住に不安に不安を抱える高齢者は大きく増えていきます。この社会変化の中では、実態に即した社会資源の最適化、喜ぶ高齢者数の最大化、こういった考えが我々民間が進める事業でも、求められてくるのかと思われます。

天野 陽介

このコラムを書いたコンサルタント

天野 陽介

中小企業診断士、社会保険労務士試験合格、宅地建物取引士試験合格。カナダのビジネススクール卒業後、海外教育機関にて勤務、留学支援事業の立上げ・運営を経験。2015年にCBグループへ入社。医療介護業界に特化した多角化経営コンサルティングを数多く担当。

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