高齢者住宅
2020.11.07
事業者として地域包括ケアシステムに関わるためにすべきこと(2)
前回に引き続き「事業者として地域包括ケアシステムに関わるためにすべきこと」について解説します。
本コラムでお伝えする内容
今回は「4」「5」を解説いたします。
- (前回)今更だけど、地域包括ケアシステムって何?
- (前回)なぜ地域包括ケアシステムが必要なの?
- (前回)地域包括ケアシステムは実現しつつあるの?
- どうしてサ高住の整備が進まなかったの?
- どうすれば事業者として地域包括ケアシステムに関われるの?
前回のコラムで解説したポイント
前述の「1」「2」「3」を解説いたしました。ポイントは下記の通りです。
- 地域包括ケアシステムの中心となるのは「住まい」である
- 個人宅への在宅医療・介護の提供には限界がある
- そのため高齢者が安心して暮らせる集合住宅を整備する必要がある
- サ高住の整備が予定より大幅に遅れている
4.どうしてサ高住の整備が進まなかったの?
ここからは、地域包括ケアシステムの中心となり得る住宅として整備を進めてきたサ高住の整備進捗が予定より大幅に遅れていることを紐解きます。
整備が進んでいない1番大きな要因は「入居費用の高さ」であると考えています。
かといって入居費用を下げることができない理由が制度上に隠れているのです。
まず、サ高住の入居費用についてご説明します。
国土交通省の資料では、全国のサ高住の平均入居費用は10.5万円と記載されています。
「あれ、思ったより安いなあ。」と感じた方、まってください。
実際には、上の表に記載されている通り、96.1%の入居者が受けている食事の提供がセットのようなものです。
仮に食費を月に4万円とすると、入居費用(食費込み)の月額平均は【14.5万円】です。
もちろん、これにプラスして介護・医療費、消耗品費、場合によっては水道光熱費等も追加で必要です。
2019年国民生活基礎調査によると、65歳以上の1人当たりの所得は、約199.7万円/年です。
これを単純に12か月で割ると約16.6万円です。
14.5万円の家賃と食費を支払うと、その他の費用(介護・医療費、消耗品費、水道光熱費等)が支払いきれなくなる可能性もあります。少なくとも、自由に使えるお金はほぼありません。
では、なぜサ高住の家賃が高くなるかというと、理由は簡単です。
それは、サ高住の設備基準を満たすように建物を建てると「建築費が高くなるため」です。
この高い建築費のために家賃を上げざるを得ないのです。
もちろん、家賃以外の売上、つまり介護保険料収入を増やそうと考える事業者も多くいらっしゃいます。
実際に、要介護度の高い高齢者の入居率を上げ、事業を成り立たせている事業者の方にもお会いしてきました。
やはり「寝たきりの人もいるが、これでは何のために広い部屋や設備を用意したのか」と制度と実態の事業の乖離を感じているようでした。
ましてや、要介護度が高いためより多くの介護職員が必要であり多くのお悩みを抱えていらっしゃるようでした。
5.どうすれば事業者として
地域包括ケアシステムに関われるの?
今後、事業者として地域包括ケアシステムに関わるには、つまり、地域包括ケアの中で顧客にサービスを提供するには、上記のような高齢者の集合住宅と繋がりを持つ必要があります。
ところが、 ここまでにご説明した通り、その集合住宅の整備が進んでいない状況です。
また、既に在宅サービスを提供されている事業者の皆さまの中には経験されている方も多いように、集合住宅と繋がりを持つための営業活動も簡単なものではありません。
そこで1つの有効な方法としてご提案しているのが、この「自ら集合住宅を建てる」ということです。
地域包括ケアシステムは今後も進めるべき政策です。そのためにはサ高住のような集合住宅が不可欠です。
ただ、サ高住の制度(設備基準)は、事業者にとって厳しいものであり、苦労されている例を多く見てきました。
この制度上の課題は既に国土交通省のサイトにある検討会でも取り上げられています。
出典:国土交通省 – サービス付き高齢者向け住宅の整備等のあり方に関する検討会(第 6 回) 資料3 園田意見書(2016.2.2)(2ページ下部~3ページ)
今後は、制度だけにとらわれず、高齢者の収入の範囲内で安心して住める住宅を、事業者の無理のない方法で提供する策を追求する必要があります。
私たちCBリサーチは、医療・介護・福祉業界に特化した「戦略コンサルタント」として「地域包括ケアシステム」に沿った戦略構築と実行支援を行い、お客様の未来を共創する会社です。様々な新規事業展開をワンストップで共創します。